広島大学教育開発国際協力研究センターCenter for the Study of International Cooperation in Education Hiroshima University

モルディブ共和国ラシード教育担当国務大臣が東広島市小中学校を視察しました。

在モルディブ日本大使館専門調査員、広島大学国際協力研究科修士2年休学中の太田洋舟です。

学校視察の主な目的は、一国の政策立案者であるラシード教育担当国務大臣が、「規律」や「自律」の精神を育む日本の伝統的な教育を実際に視察することで、今後、モルディブの小学校に日本型教育を導入することにあります。その背景として、モルディブ教育はCambridge International System(Oレベル・Aレベル)を導入していることもあり、学校は成績至上主義に偏重していることが挙げられます。今回は、同プロジェクト協力団体として本研究センター(CICE)が「大臣研修」という形でラシード大臣を東広島に招へいし、三ツ城小学校、豊栄小学校、安芸津中学校を4日間かけて案内しました。

 

視察を通じてラシード大臣は、清掃・給食配膳・休み時間・日直制度に強い関心を示しており、また、教育行政側の立場から東広島スタンダード(挨拶・返事・言葉遣い・履物をそろえる)や教師教育、学校施設や予算などにも関心を寄せていました。同大臣の訪問は、NHK広島放送局や東広島市役所だけでなく、モルディブ教育省SNSなどでも報じられ、大きな反響がありました。今後は、モルディブ教育省とCICEが共同して、モルディブのイスラーム教育の価値観に沿う形でアクティビティ・フレームワークを作成し、国内25のパイロット校にて日本型教育の実施を目指します。将来的にはプロジェクト規模をモルディブ全国(約200校)に拡大し、規律と自律の精神を持ち、心豊かな人を育てるモルディブ学校教育に貢献することが最終目標です。

 

5月19日(木)には、東広島市市長および市教育委員会を表敬訪問しました。教育委員会の取り組みの中でも、教育環境の整備、一校一和文化学習、地域を支える学校といった東広島市の独自性を教育行政側が創出し管理していることに感銘を受けていました。また、各校で決めたテーマに基づいて研究授業および授業提案を推進する様子は、モルディブで推進されるプロジェクトベースドラーニング(問題解決型学習)に通ずるものがあり、新たな知見を得ていました。教育行政と学校現場の両方の視点から東広島市の教育を観察できたことは、モルディブ国内でのパイロット事業に大いに活用されます。

 

最後に、本訪問の全日程同行を通じて、一人のモルディブ教育研究者として、私がモルディブ教育の未来の発展のためにできることは何か、そして今すべきことは何か、自分を見つめ直す素晴らしい機会を日下部達哉准教授に与えて頂きました。コロナ禍でも現地で生活できる喜びを忘れず、プロジェクト実施に向けたモルディブ教育省との連携や個人の研究に邁進していきたいと思います。