研究業績
研修業績
Nozomi Sakata, Nicholas Bremner, Leanne Cameron 本論文では、学習者中心型教授法に関する多数の実証研究を、システマティックレビューの手法を用いて分析、研究の焦点・手法・結果を分類し、網羅的に取りまとめた。以下に要旨を掲載いたします。 This article provides a comprehensive descriptive overview of the implementation of learner-centred pedagogy (LCP) in low- and middle-income countries. Considerable time, money and resources have been invested in LCP in many countries worldwide, and yet we still lack a comprehensive body of evidence regarding its implementation and outcomes. This systematic review aimed at going beyond the limitations of individual studies, confined by time, context and samples, in order to offer stronger applicability and generalisability to wider contexts. The dataset for analysis consisted of 94 journal articles published between January 2001 and December 2020, selected based on explicit inclusion/exclusion criteria. A team of three researchers utilised EPPI-Reviewer and QSR NVivo to import, screen, and analyse the texts. The literature on LCP implementation was mapped by key variables such as country, educational setting, study participants, and methods. Firstly, the study found that despite LCP being explicitly promoted in numerous contexts, most classrooms were still predominately teacher-centred. Secondly, the review identified a wide range of constraints and enablers of LCP implementation, spanning across the individual, classroom, school, policy, and wider society levels. Thirdly, although several positive and negative outcomes of LCP emerged from the study, the review found that the objective evidence on LCP outcomes was somewhat limited, indicating that there is an urgent need for additional research to evaluate LCP outcomes. A conceptual framework of LCP implementation is presented, and implications for policy and future research are discussed. |
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The Outcomes of Learner-Centred Pedagogy: A Systematic Review Nicholas Bremner, Nozomi Sakata, Leanne Cameron
本論文では、発展途上国における学習者中心型教授法の成果を、システマティックレビューを通して総括的にマッピングしました。以下に要旨を掲載いたします。 An increasing number of studies have investigated the implementation of Learner-Centred Pedagogy (LCP) in different countries, but there is still limited empirical evidence on what impacts LCP may have on learners and learning. This article summarises the findings of a systematic review of 62 journal articles reporting the outcomes of LCP implementation in low- to middle-income countries. The review found relatively few studies that provided objective evidence of LCP effectiveness. A higher number of studies identified non-objective perspectives of LCP effectiveness, such as teacher and student perceptions, as well non-cognitive outcomes such as increased student motivation, confidence, and enhanced relationships. |
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Mohd Ali Samsudin, Melanie Carmen Moen, Pham Thi Thanh Hai, Belay Hagos Hailu, Arif Hidayat, Yoko Ishida, Tatsuya Kusakabe, Hiroaki Ozawa, Nor Asniza Ishak, Shaik Abdul Malik, Bin Mohamed Ismail, Toyin Eunice Owoyemi, William AL Anangisye, Nkanileka Loti Mgonda, Joyce Ayikoru Asiimwe, Charles Kyasanku Indicators for the Measurement of Teachers’ Professional Identity across Asia and Africa: A Delphi Study. Journal of Asian and African Studies この研究は、CICEが事務局を務めるアフリカ-アジア大学間対話(A-Aダイアログ)ネットワークの参加大学からの14名の研究者が参加して分析、出版が行われました。教師のアイデンティティ形成は、個人的な経験、職業的な実践、外部環境の相互に関連する次元が関与するプロセスとして理解され、それは、むしろその役割を遂行する個人によって構築され、教育者の教師としての役割よりも、その人の価値観、感情、態度、民族性、文化に基づいています。そうであれば、TPIの概念は、「専門家としての私とは何か」という問いに対する答えによって記述することができます。このような質問に対する答えから、TPIは、教師として期待される役割の個人的、社会的、制度的な次元に基づいて教師が構築した意味の相乗効果として定義されます。TPI の研究は、先進国では有名であるが、発展途上国ではほとんど行われていないため、本研究では、アフリカとアジアの地域に有効な TPI の指標についてコンセンサスを得るために、デルファイ調査の手法を用いました。アフリカやアジアの研究者は、質問票を用いて TPI 研究を行いました。デルファイ調査のプロセスでは、教師の職業的アイデンティティを検証するために3つの段階を経ました。まず、アフリカとアジアの研究者は、TPIの指標をリストアップするために自由形式のディスカッションを行い、次に、第 1 ラウンドで提案された TPI 指標からなるアンケートを送付しました。最後に、専門家に各項目の関連性のレベルを評価してもらいました。研究者は、個人的、社会的、制度的な領域から指標を作りました。専門家は、社会的、文化的、経済的に異なるコンテクストの回答者間で混乱が生じる可能性を真剣に懸念しました。本研究の結論としては、社会的文脈が異なるにもかかわらず、デルファイ調査の結果は、質問票のほとんどの項目について、アジアとアフリカの研究チームの間で高いレベルのコンセンサスが得られたことを示しています。アフリカとアジアでは、個人的、社会的、制度的領域におけるTPIの特徴に基本的にほとんど違いはないといえることが明らかになりました。 |
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Choi, S. (2021). The impact of education levels and paths on labor market outcomes in South Korea: Focusing on vocational high school graduates. Social Sciences & Humanities Open, 4(1), 1-10. CICEの崔善境研究員の「The impact of education levels and paths on labor market outcomes in South Korea: Focusing on vocational high school graduates」という論文が新しく国際学術雑誌に掲載されました。本研究は、高学歴であるという認識が支配的であり、それが理由で、現在、後期中等職業教育卒業者の3分の2がまた大学に進学する状況から労働市場の多大な損失している問題意識を提供しています。この論文では、韓国職業訓練研究所で2004年から2014年までに集計された韓国教育と雇用 (Korean Education and Employment Panel: KEEP) パネルデータを利用し、韓国の独特な教育環境でのさまざまな教育経路が雇用と賃金に与える影響を検証しました。まず、前述した韓国の教育・雇用データを用いて3段階モデル分析を行い、第1段階では、韓国における中等教育選択要因を実証分析しました。第2段階に、中等教育から高等教育に進学する際の様々な教育経路パターンを確認し、最後の第3段階目では、それぞれの教育経路による労働市場での雇用、賃金、雇用形態の面における成果を明らかにしました。具体的には、プロビットモデルと最小二乗モデルだけでなく、個人や家族属性をコントロールしたうえで、条件付き期待値補正法モデルを使用して、観測されていない変数をコントロールしました。この論文では、高等教育あるいは後期職業中等教育を終えてすぐ労働市場に直接参入した場合、高等教育は賃金の面では高い効果を示しているが、雇用状況には有意ではないことが明らかにされました。さらに、後期中等職業教育を終えてから労働市場に参入せず大学に進学することは賃金・雇用の面には影響を与えないこともわかった。この結果から、韓国における高等教育への進学は必ずしも労働成果をあげることを保証するわけではないということが明らかになった。今後、韓国では、高等教育こそが仕事への最良の道であるという信念を変え、職業に相応しい実践的な教育政策や戦略が確立されることが不可欠であることが要請されます。 |
Choi, S. (2021). Urban/rural disparities in the wage effect of additional vocational education after formal education: the case of the Philippines. International Journal of Training Research, 19 (1), 000-000. https://doi.org/10.1080/14480220.2021.1935296 2021年6月、CICEの崔善境研究員の新しい論文「Urban/rural disparities in the wage effect of additional vocational education after formal education: the case of the Philippines」が国際学術雑誌「International Journal of Training Research」に掲載されました。本研究では、フィリピンで正規教育を修了した後に受けた追加的職業教育が賃金へ与える影響に関して、農村部と都市部において異なる賃金効果の比較をしています。研究分析では、正規教育後の追加的職業教育効果をフォーマルセクターの正規雇用者に焦点を当てて、各産業別の農村/都市部に分けて比較推定しています。賃金効果の推定は、ミンサー型教育収益関数に基づき2段階で行われ、1段階ではOrdinary Least Square (OLS) 推定を使用し、2段階ではヘックマン法を使用してサンプル選択バイアスを修正しました。研究分析によると、賃金効果については中等教育を修了した人々の追加的職業教育収益率が最も高くなっており、都市部よりも農村部でより顕著な賃金効果があることが明らかになりました。この結果から、特に、雇用状況の安定していない低熟練労働者の多いフィリピンの農村部において、中等教育後の職業教育の育成を行うことが雇用状況の改善に効果的であることが示唆されます。 |
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Nozomi, S.(2021). Capability approach to valued pedagogical practices: An alternative to learner-centred pedagogy?. Journal of Human Development and Capabilities Journal of Human Development and Capabilitiesに、坂田のぞみ研究員の「Capability approach to valued pedagogical practices: An alternative to learner-centred pedagogy?」が掲載されました。国際教育政策を通して教育借用されてきた学習者中心型教授法(Learner-centred pedagogy: 参加型学習、協調型学習など)への批判は尽きません。ただ、それに代わってどのような教授法が途上国の現場で実施されるべきか、という議論も前進していないのが現状です。本論文ではケイパビリティアプローチを用いて、タンザニアを事例に「現場教員が価値をおく教授法はいかなるものか」を探求しました。30名の小学校教員とのインタビューデータを分析した結果、国際・国内・現場レベルの教育関係者間の上下関係が、教員の価値観に影響を与えていることが浮き彫りとなりました。現地の人々が価値をおく教育のあり方を調査するには、上からの政策圧力を比較的受けやすい教員のみではなく、生徒や保護者、市民団体などさまざまなステークホルダーとの対話が必要です。 |