広島大学教育開発国際協力研究センターCenter for the Study of International Cooperation in Education Hiroshima University

センター長あいさつ

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センター長挨拶

 新型コロナウィルスの蔓延が、私たちのあらゆる活動を混乱させてすでに3年目となりました。教育も例外ではありません。これは、途上国のみならず、日本などの先進国でも同様で、まさに地球規模の喫緊の課題です。加えて、ウクライナをめぐる平和、人権、民主主義、共生といった普遍的な価値観を脅かす安全保障上の深刻な問題が、私たちの経済や生活全般にも暗い影を落としています。それは長らく禍根を残すことでしょう。いずれの事象も、私たちの従来の取り組み、優先順位意識、生活様式に、大きな影響を及ぼしています。局地的に見れば、これらに劣らないほど深刻な問題に日々直面している人々が少なくないことも事実です。

 2015年にSDGsとして合意した、地域を超え、世代を超えた緊急の課題を克服することの重要性は増すばかりです。ここ数年間に起こった変化、革新的取り組みは何をもたらしたのか。それらは、従来からの問題に対して、どのような問いを投げかけ、答えを提示しているのか。教育がすべてのSDGs達成のカギを握っていることを、私たちは疑いません。目標達成までの中間年にあたり、真剣な検証と知見の共有、解決に向けた新たな協働のあり方に向けて、研究者としての役割を今こそ果たさなければならないと、痛感しています。

 さて、CICEは1997年の設立から今年で25年になります。この節目の年に二つの重要な進展がありました。ひとつは、組織に関わることです。広島大学は今年度、新たにIDEC国際連携機構を始動させました。新機構は本学の大学院改革前に活躍していた大学院国際協力研究科(IDEC)が培った国際協力・国際開発の知見の蓄積を生かしつつ、広島大学全学のグローバル化を先導するトランスディシプリナリーな実践的研究の拠点となります。CICEはこの新機構の一翼を担うことになりました。

 もうひとつは、CICEが発刊してきた『国際教育協力論集』が、このたび世界的学術出版社であるEmerald社と協力し、第一級の強力な編集委員会体制のもと、完全査読つきオープンアクセスジャーナルJournal of International Cooperation in Educationとして再出発したことです。途上国の教育政策と実践についての諸問題に、従来型の確立された方法論にこだわらないアプローチで切り込むユニークな学術誌として学術的議論を牽引します。

 CICEが構築してきた人的、組織的ネットワークを生かし、さらに広げつつ、新たな地平を開拓し続けます。引き続きのご指導、ご鞭撻を賜りますようお願いいたします。

令和4年(2022年)4月

広島大学 IDEC国際連携機構 教育開発国際協力研究センター センター長  吉田 和浩