センター長あいさつ
センター長挨拶
1997年に設立された当センター(CICE)は、もうすぐ30周年を迎えようとしています。この間、教育開発の潮流は、「万人に教育を普及する」という量の課題から、「良質な教育を全ての人々に」という質の課題へと変わっていきました。そしてCICEのミッションも常にそうした変化に対応してまいりました。
しかし我々は、教育開発が進展したからこそ教育格差が拡大する、未だに学校教育にアクセスできない人々の課題が以前にも増して重い課題になってきている、といった、教育が世界的に発展したからこそ新たな課題が生まれる事態に直面しています。さらには、新型コロナ・ウイルスの世界的蔓延や、ウクライナやパレスティナでの戦争・紛争などのクライシスによるラーニング・ロスが、将来にわたり長引く形で深刻な影響を及ぼすであろうことも推測されます。
こうした地球規模の課題に対し、研究知と実践知を結集すべく、多種多様な研究プロジェクトを、アジアやアフリカの研究者たちと共に進めたり、当センターが実施するJICA受託研修で、アジア・アフリカ諸国のみならず、ウクライナからの研修生も受け入れ、センターの教員、学生、研修生として受け入れた他国の教育行政官たちと対話を促すなど、来たるべき復興のための礎を固めることに微力ながら貢献しています。
さらに当センターから、前センター長の吉田和浩教授がUNESCOステアリング・コミッティーの副議長(現共同議長)として2015年のSDGs、とりわけSDG4策定に参画、グローバルな教育課題の解決へ向けた重要な潮流の形成に貢献しました。いわばCICEは「SDG4の郷」ともいえる存在です。
そして、CICEは、インハウス・ジャーナルとして発刊してきた『国際教育協力論集』を、世界的学術出版社であるEmerald社と協力、第一級の強力な編集委員会体制のもと、オープンアクセスジャーナルJournal of International Cooperation in Educationとして発刊することに成功しました。引き続き、非西洋の視点を確保したアプローチで切り込むユニークな学術誌として学術的議論を牽引します。
CICEが構築してきた人的、組織的ネットワークを生かし、さらに広げつつ、新たな地平を開拓し続けます。引き続きのご指導、ご鞭撻を賜りますようお願いいたします。
令和7年(2025年)4月
広島大学 IDEC国際連携機構 教育開発国際協力研究センター センター長 日下部 達哉